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ぱんぷきんすーぷ

 わたしの得意料理はパンプキン・スープだ。
 最初に作ったのは、まだ小学生のころで、最初は今思えば、ひどいできだったと思うけど、おにいちゃんは「美味しい」といってくれた。
 作り方は、皮をむいた「かぼちゃ」を湯がいて、それを裏ごししたのに、生クリームとブイヨンスープを混ぜて、少し火にかけるだけだ。
 生クリームは、火を止めてからのほうが、美味しいと気づいたのは、最近だ。



「ご飯とか作れるの?」
「うーん、ちょっとだけ」
 最近付き合い出したカレは、けっこう年上で、わたしに何を求めているかは、一目料善。
 奥さんを亡くして、長いそうで(でも、本当にそうなのかは、怪しいと思っている)、外食ばかり。それで家庭料理にうえている。
「今度、作ってくれるかな?」
「えー、きっと美味しくないよ」
「いや、エリーの作る料理なら、どんなものだって美味しいさ」
 そんなこんなで、久しぶりに、あれを作ることとなった。


「大きな、荷物だね」
「うん、ちょっと、ね」
 メインがスープじゃあれなので、デパ地下で、高級惣菜を用意しておいた。
 カレには料理用の道具が入っているといったけど、その中にはタッパーウエアに入った惣菜たちが待機している。
「あ、かぼちゃと生クリーム、買ってくるの忘れちゃった」
 わたしがそう言うと、じゃあ、買ってくるよ、と言ってカレは部屋を出ていった。
 近所にはコンビニがあったけど、そこには「かぼちゃ」がないことは確認済みだ。


「お待たせ」
 カレの手にしていたのは、大手チェーン系のスーパーマーケットの袋だった。
「ありがとう」
「ああ、いい匂い。美味しそうだね」
 カレがキッチンを通り抜けて、奥のリビングに入る前に、かぼちゃをさっと洗って、包丁でバラす。
 大きな音がして、カレが振りむく。
 わたしはカレにほほ笑む。
 カレは、なんだ、かぼちゃを切る音なんだ、と納得して、笑顔を返す。
 カレが奥に消えると、わたしは真剣に料理を始める。いや、最初から真剣に料理をしてはいたのだけれども・・・。


「お待たせ」
「どれも美味しそうだね」
 食卓の上に並んだ料理は、とても美味しそうだった。
「いただきます」
「どうぞ、召し上がれ」


「いやぁ、とっても美味しかったよ」
「そう」
 見ると、スープ以外は全部きれいになくなっている。
「あの、いつも外食なんだよね」
「うん」
「でも、けっこう高いんじゃないの、このお皿」
「ああ、ちょっとしたものだよ」
 わたしは、まさかと思う。でも・・・。


「もう、そろそろ、終電が近いんじゃないかな」
「あ、そうね」
 泊めてくれないみたいだ。
「送っていくよ」
「・・・でも、遅いし」
「いや、最近は物騒だしね」
 わたしは思い切って聞いてみる。
「あの、お皿、どこで買ったの?」
「え?」
 わたしは確信した。
「いえ、いいの」

 わたしたちは駅に向かう道を並んで歩いていく。
 早く電車に乗りたい。
 わたしはそう思いながら、カレとむなしい会話を続けていた。
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